74.4%が「広報の役割が広がった」と回答 ──AI時代に広報人材へ求められる力とは

(2026年09月11日掲載)
マスメディアンは、2026年9月3日に開催された「広報会議サミット2026」の参加者を対象に、「AI時代の広報人材に関する意識調査」を実施しました。
生成AIの普及により、プレスリリースや記事の作成、企画の壁打ち、情報収集など、広報業務のさまざまな場面でAIが活用されるようになっています。では、AIによって広報の仕事は実際に減っているのでしょうか。また、広報に求められる役割やスキルはどのように変化しているのでしょうか。
今回の調査では78人から回答を得ました。回答者のうち68人(87.2%)が広報・PR職です。結果から見えてきたのは、AIによって一部の業務が効率化している一方で、仕事量が必ずしも減っているわけではないという傾向です。また、この3〜5年で広報に求められる役割が広がったと感じている回答者も多く、マーケティングや採用、経営・事業との連携など、広報が担う領域の変化もうかがえました。
本記事では、調査結果と自由回答をもとに、AI時代の広報人材に求められる力について考えます。
調査結果のポイント
AIで広報の仕事は減った? 調査から見えた仕事量と役割の変化
Q1|ご自身の現在の職種を教えてください

Q2|AIの活用によって、広報業務全体の仕事量はどう変化しましたか?
「大きく減った」が5.1%、「やや減った」が25.6%で、「減った」と回答した人は合計30.8%。一方「ほとんど変わらない」も30.8%、「やや増えた」20.5%、「大きく増えた」5.1%で、「増えた」と回答した人も25.6%となりました。AIによって広報業務が効率化しているなら、仕事量は大きく減っていそうなものです。しかし今回の結果を見る限り、必ずしもそうとは言えません。
Q3|そのように感じる理由を教えてください(任意)
回答数:39件1. 原稿作成・校正などの効率化
○ プレスリリースや記事、社内文書の作成時間が短縮
○ 誤字脱字のチェックや文章の推敲が効率化
2. 企画・アイデア出しや壁打ちの効率化
○ 企画のたたき台づくりやアイデア出しがスムーズに
○ AIとの壁打ちが思考整理や視点の広がりに貢献
3. 情報収集・要約などの効率化
○ 情報収集やリサーチの時間が大幅に短縮
○ 長文資料の要約・整理にかかる時間を削減
4. 効率化により、より戦略的な業務に注力
○ 削減できた時間を戦略立案や企画に活用
○ 社内調整や関係構築など、人が担う業務が増加
5. 新たな仕事の増加や確認工数の増加も
○ 対応できる案件が増え、仕事量はむしろ増加
○ AI生成内容の確認・修正や管理職のチェック工数が増加

その一方で、こんな声もありました。
AIによって一つひとつの作業時間が短くなっても、その分担当する案件が増えたり、これまで手が回らなかった仕事に取り組んだり、新しい価値を求められたりしている──そんな実態がうかがえます。「AIを使って文章作成が簡単にできるようになった分、リリース案件が増えた」
「AIが効率化する分、それ以外でやることが増えた」
「アシスタント業務は減ったが、その分より新しい価値を求められている」
AIは広報の一部の「作業」を減らしている。しかし、広報の「仕事」そのものを減らしているとは限らない。
今回の調査からは、そんな変化が見えてきます。
役割が広がった先にあるもの
74.4%が「広報に求められる役割が広がった」
では、広報の仕事そのものはどう変わっているのでしょうか。Q4|あなたの会社・組織で、広報に求められる役割はこの3〜5年でどう変化しましたか?
「大きく広がった」33.3%、「やや広がった」41.0%を合わせると、74.4%が役割の拡大を実感しています。一方、「やや狭まった」は2.6%、「大きく狭まった」は0%でした。さらに、仕事量の変化と役割の変化を掛け合わせると、特徴的な傾向が見えてきます。仕事量が「大きく増えた」「やや増えた」と回答した20人のうち19人が、役割の拡大も同時に回答していたのです。仕事量が増えた人の95%が、役割拡大も実感していることになります。
今回の調査だけで、AI活用と役割拡大の因果関係までは示せません。ただ、少なくとも「AIによって広報の仕事が効率化し、仕事そのものが縮小している」という単純な構図ではなさそうです。むしろ広報が担う領域そのものが広がっていることが、仕事量が減らない一因になっている可能性があります。
広報の仕事は「情報発信」から、より経営・事業に近い領域へ
具体的に何が広がっているのか。自由回答からは、いくつかの共通した変化が見えてきます。一つは、マーケティングとの境界の変化です。「マーケティング領域にもまたがる」「マーケやPRとの垣根が低くなってきた」といった回答が寄せられました。メディアに情報を届け、記事として取り上げてもらうだけでなく、WebやSNSも含め、ターゲットや成果を意識したコミュニケーション設計まで、広報が関わるようになったと感じている回答者もいました。
もう一つは、経営・事業との距離の変化です。「商品PRや記事露出だけでは事業貢献ができない。経営課題を理解して経営陣に提案する必要がある」「事業戦略に基づく広報活動になっている」「企業価値がより重視されるようになった」といった声が寄せられました。
さらに、採用や個人株主を含めたメッセージ設計に関する回答も見られます。広報の対象がメディアだけでなく顧客、社員、求職者、投資家などへ広がれば、求められる知識や役割も当然変わってきます。
単に「会社の情報を発信する人」ではなく、経営や事業の課題を理解し、それを社内外のステークホルダーとのコミュニケーションにつなげる人へ。自由回答からは、広報の役割がより経営や事業に近づいていると感じている回答者がいることがわかります。
Q5|そのように感じる理由や、具体的に変わったことを教えてください(任意)
回答数:27件1. マーケティングとの連携強化○ マーケティング戦略の一翼を担う存在に○ キャンペーンやプロモーションとの連動が増加
2. 採用・インナー向けコミュニケーションの拡大○ 採用広報やリクルーティングへの関与が拡大○ 社内向けの情報発信やエンゲージメント向上の役割も増加
3. 経営・事業戦略との連携深化○ 経営課題を理解し、経営陣に提案する機会が増加○ 事業戦略に基づく広報活動が求められるように
4. IR・サステナビリティ・ブランディングなどへの拡大○ IRやサステナビリティ、ESGへの関与が拡大○ 企業やブランド価値向上の役割がより重要に
5. 多様なステークホルダーとの関係構築○ メディアだけでなく、顧客、投資家、地域社会など幅広いステークホルダーとの対話が増加○ 共創や共感を生むコミュニケーションが求められる
AIで「つくる力」の価値がなくなるわけではない
AIによる効率化の一方で、アウトプットを見極める力が重要に
AIによって文章や企画案を短時間でつくれるようになると、「書く力」「つくる力」は必要なくなるのでしょうか。自由回答からは、むしろ別の課題が浮かび上がります。AIを使ったアウトプットが増える一方、基本的なスキルや判断力が十分でない状態で成果物がつくられ、確認や修正にかかるマネジメント側の負担が増えているという声がありました。本質を捉えていない企画や形式的なプレスリリースなど、部下の実務を確認する工数が増えているという回答もあります。
AIを使えば、一定の体裁を整えた文章や企画案をつくること自体は以前より容易になります。しかし、「文章が完成していること」と「広報として良いアウトプットであること」は同じではありません。
その情報にはニュース価値があるのか。誰に、何を伝えるべきなのか。その企画は事業や経営の課題につながっているのか。AIが生成した内容に事実誤認はないか。そして、その表現は本当に「自社らしい」のか──。
AIがアウトプットをつくれるようになるほど、そのアウトプットを評価し、意思決定する力が重要になっていくと考えられます。
AI時代だからこそ「自社らしさ」が問われる
広報の課題は、AI活用だけではない
現在の広報活動における課題についても、自由回答で聞きました。そこでは、「AIをどう使うか」だけではない課題が数多く挙げられています。Q6|現在、広報の仕事をするなかで、課題や難しさを感じていることがあれば、具体的に教えてください(任意)
回答数:27件1.リソース・体制の課題
○人員不足やひとり広報で業務負荷が高い
○兼務や他業務との両立が難しい
2.社内・経営層の理解や協力の不足
○広報の価値や役割への理解が十分ではない
○情報提供や協力を得ることが難しい
3.メディア・ステークホルダーとの関係構築
○メディアとの信頼関係構築に時間がかかる
○対話の機会や接点づくりが難しい
4.成果の可視化・評価の難しさ
○KPIの設定や効果測定が難しい
○定量・定性の成果をどう示すか悩む
5.AI時代ならではの課題
○機密情報の取り扱いやセキュリティへの不安
○コンテンツの均質化による差別化の難しさ
○AIやコミュニケーション手法の変化と人材のスキルギャップ
社内の広報への理解、経営層との認識の差、社内からの協力、予算の確保。戦略面では、ニュース価値のある自社資産を見つけること、成果の評価やKPI設定、自社らしさの言語化、コンテンツ設計。さらに、メディアとの関係構築、新しいメディアの開拓、若手の育成、広報人材の不足なども挙げられました。AI時代ならではの課題としては、AI利用における機密性に加え、AIによってコンテンツが均質化し、差別化が難しくなることを指摘する声もあります。AIによって一定水準の文章やコンテンツをつくりやすくなるからこそ、「何を伝えるか」「なぜ自社がそれを語るのか」が重要になります。AIを使いこなすことはもちろん必要ですが、それだけで企業ならではのコミュニケーションが生まれるわけではありません。
調査結果から考える、AI時代の広報人材に求められる5つの力
ここからは、定量調査と自由回答をもとに、マスメディアンが考える「これからの広報人材に求められる力」を整理します。
1.判断力
AIが生成した文章や企画をそのまま使うのではなく、情報の正確性やニュース価値、企業として発信する意味を判断する力です。AIがアウトプットを大量につくれるようになるほど、「つくる」だけでなく「選ぶ・判断する」ことの重要性は高まります。
2.経営・事業を理解する力
広報の役割が経営や事業へ近づくにつれ、コミュニケーションの知識だけでは十分ではなくなります。自社がどのような事業を行い、何を目指し、どのような経営課題を抱えているのか。その理解を広報活動へ落とし込む力が必要です。
3.編集する力
AIによって情報を生み出すコストが下がるほど、世の中に流通する情報量は増えていきます。その中で「何を伝え、何を伝えないのか」「誰に、どの順番で伝えるのか」を設計する編集力が、これまで以上に重要になるでしょう。
4.関係を構築する力
メディアとのリレーションはもちろん、経営層、事業部門、社員などを巻き込むことも広報の重要な仕事です。こうした人と人との関係構築は、AIだけで完結するものではありません。
5.自社らしさをつくる力
AIによって一定品質のコンテンツをつくりやすくなるほど、似たような情報や表現が増える可能性もあります。だからこそ、自社ならではの価値や考え方を発見し、言葉にし、社会との接点をつくる力が重要になります。
AIで広報の仕事がなくなるのではなく、広報の役割が変わっていく
今回の調査では、AI活用によって広報の仕事量が「減った」と回答した人は30.8%でした。一方、「広報に求められる役割が広がった」と回答した人は74.4%に上ります。AIによって、原稿作成や情報収集、企画の壁打ちなど、広報のさまざまな作業を効率化できるようになりました。しかし、そこで生まれた時間がそのまま「仕事の減少」につながるとは限りません。広報には、マーケティングとの連携、経営課題の理解、社内外のステークホルダーとの関係構築、自社ならではの価値の発見など、これまで以上に幅広い役割が期待され始めています。
AIが広報の「作業」を担うようになるなかで、人には「何をするべきかを決める力」が、これまで以上に問われていく。
広報人材に求められる価値は、「コンテンツをつくれること」だけでなく、経営や事業を理解したうえで何を伝えるべきかを判断し、社内外を動かしていくことへと広がっているのではないでしょうか。AIをどれだけ使えるかだけでなく、AIを使った先で人がどのような価値を生み出すのか。それが、AI時代の広報人材を考えるうえで重要な問いになりそうです。
では企業は、どんな広報人材を採用・育成すべきなのか
広報経験だけでなく、「どう考え、周囲を動かしてきたか」を見る
ここまで見てきたように、AI時代の広報に求められるのは、単にプレスリリースを書けることや、メディア対応ができることだけではありません。AIを使いながら、「考え、判断する力」をどう育てるか
「AIが使える人」だけを探さない
調査概要
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