退職の伝え方は?上司に切り出すタイミングや状況別の例文も解説

(2026年08月26日掲載)
退職を円滑に進める場合は、原則として、就業規則を確認したうえでまずは直属の上司へ直接伝えます。内定が出ても、担当案件や取引先を抱えたままでは、切り出す日と言い方が決まらず、動き出せないという方も多いでしょう。
当記事では、退職を伝える日の決め方、上司への切り出しの段取りなど、退職の伝え方を詳しく解説します。面談を依頼する日を自分で決め、入社日に間に合うスケジュールで手続きできるよう、退職を控えた方はぜひ参考にしてください。
なお、ハラスメントや心身の安全に関わる事情など、通常の手順を待てない緊急性の高い退職の場合は、本記事の進め方にかかわらず、人事担当者や社外の相談窓口に早めに相談することを検討してください。
1. 退職を伝えるのはいつがよい?
会社が退職の申出期限を就業規則で定めているのは、後任の手配と引き継ぎに使う時間を確保するためです。伝える日は、就業規則の申出期限、転職先の内定承諾、担当案件の区切りという3つの基準を重ねて決めましょう。
1-1. 就業規則の申出期限から逆算して日を決める
退職を伝える日を決める際は、まず就業規則に定められた申出期限を確認しましょう。円滑に退職手続きを進めるためには、余裕を持って申し出ることが大切です。退職に関する事項は、常時10人以上の労働者を使用する会社が就業規則に記載する事項として労働基準法で定められています。あわせて押さえておきたいのが、法令上の期間です。雇用の期間を定めていない場合、各当事者はいつでも解約の申入れができ、雇用は申入れの日から2週間を経過することで終了すると定められています。法令上の扱いを確認したうえで、円滑な引き継ぎや社内手続きを希望する場合は、就業規則に定められた申出期限も踏まえ、余裕をもって日程を検討するとよいでしょう。ただし、具体的な退職時期の扱いは雇用契約や個別事情によって異なるため、判断に迷う場合は人事や専門家へ確認してください
1-2. 原則として転職先の内定を承諾した後に伝える
転職を理由に退職する場合は、内定を承諾し、入社日の目安がわかってから退職を伝えるのが一般的です。承諾より前に切り出すと、退職日を先に固めた状態で選考を続けることになり、入社日の調整余地がなくなるためです。会社は退職の申し出を受けた時点で後任の手配を始めるため、その後は話を戻しづらくなります。伝える日の目安は、入社日から逆算し、引き継ぎに必要な期間と有給休暇の残日数を足した日です。最終出勤日の後に有給休暇を消化する場合は、その日数も加えて計算します。
選考が最終面接まで進んでいても、内定通知を受け取るまで、入社日程は流動的です。内定承諾の連絡と同じ週のうちに上司へ面談を依頼する日を決めておくと、入社日に間に合わせやすくなります。
1-3. 担当案件の区切りに合わせて日を選ぶ
広告・Web・クリエイティブの職種では、入社日やご自身の事情に無理のない範囲で、担当案件の区切りも考慮すると、引き継ぎを進めやすくなる場合があります。キャンペーンや制作案件は公開までの期間が決まっており、途中で担当が変わると、判断の経緯が後任に伝わりにくくなるためです。年度末の期末進行や大型案件のローンチ直前は、上司も後任の手配に時間を割きにくくなります。区切りとして選びやすいのは、担当キャンペーンの公開後、四半期の締め後、コンペや提案の結果が出た後、月次レポートの提出後などです。転職先には、選考中の段階から現職の案件状況や入社希望日を伝えておきましょう。ただ、案件の区切りまで退職を延期する必要があるという意味ではありません。入社日が決まっていて区切りまで待てない場合は、引き継ぎの区切りを自分でつくる方法に切り替えます。進行中の案件について判断の経緯を書面にまとめる日程を先に決めておくと、区切りのない時期でも引き継ぎの計画を示せます。
2. 上司にはどう切り出せばよい?
上司が退職の相談を受けて最初に必要とするのは、いつまでに後任を決め、誰に引き継ぐのかという情報です。切り出しは、面談の時間を依頼する、二人だけになれる場所で対面で伝える、退職の意思と希望退職日をあわせて伝えるという3つの手順で進めましょう。
2-1. 直属の上司に面談の時間を依頼する
退職の意思は、一般的に、直属の上司に最初に伝えるため、まずは面談の時間を依頼します。依頼で伝える内容は、時間を取ってほしい旨と所要時間の目安の2点です。用件は今後のことで相談したい旨にとどめます。在宅勤務や外勤で対面の機会がない場合は、面談の依頼までをメールやチャットで行い、退職の意思そのものは面談で伝えるのがおすすめです。メールには、面談を依頼する旨と希望日時の候補を2〜3件、所要時間の目安として15分程度を書き添えます。定例会議の直前や締切当日など、上司が予定に追われる時間帯は候補から外しましょう。
2-2. 二人だけになれる場所で対面で伝える
退職の意思は、通常、周囲に内容が伝わらない環境で、直属の上司に対面または1対1のオンライン面談で伝える方法が一般的です。ただし、直属の上司との関係やハラスメント、安全上の事情によっては、人事担当者や社外の相談窓口への相談を優先してください。ほかの社員に聞こえる場所で話すと、上司が引き継ぎの検討を始める前に社内へ話が広がり、公表の時期を会社が決められなくなる場合があります。場所として選ぶのは、事前に押さえた会議室や面談室です。リモート勤務が中心であれば、1対1のオンライン面談にします。オープンスペースや業務用のグループチャンネルは、周囲に内容が伝わるため使いません。オンラインで伝える場合も、上司が出社している場合は会議室を予約し、周囲に話を聞かれないよう配慮しましょう。会議室の予約状況を先に確認してから候補日時を出すと、日程が確定しやすくなります。
2-3. 退職の意思と希望退職日をあわせて伝える
面談では、退職の意思と希望退職日をあわせて伝えます。意思だけを伝えると、上司は後任の手配を始める起点が決まらず、退職を考え直してほしいという段階で止まりやすいためです。日付のある相談であれば、上司は引き継ぎの検討に移りやすくなります。伝える要素は、退職の意思、希望退職日、引き継ぎに使える期間、これまでの感謝の4つです。退職の意思が固まっている場合は、その意思を明確に伝えましょう。例文の日付はサンプルのため、自分の予定に置き換えてください。
お忙しいところ恐れ入ります。9月末をもって退職させていただきたく、ご相談のお時間をいただきました。3年間ご指導いただきながら恐縮ですが、決意は固まっております。引き継ぎは9月15日までに完了できるよう進めたいと考えております。
3. 退職理由はどう伝えればよい?
上司から退職理由を尋ねられることがあります。職場側で解消できる事情かどうかや、本人の意思を確認する目的で質問される場合もあります。その場合の伝え方は、転職先で実現したいことを軸にする、不満は事実の説明にとどめる、転職先の情報は必要な範囲だけ伝えるという3つの観点から整理しましょう。
3-1. 転職先で実現したいことを軸に話す
円滑に話を進めたい場合は、転職先で実現したいことを軸に説明する方法があります。社外でしか実現できない目標を軸にすると、引き継ぎの相談に進みやすいです。広告・Web・クリエイティブの職種であれば、担当領域の変化を具体的な工程名で説明します。受託の制作進行から事業会社での自社サービスのグロースへ、コピーの一部工程の担当から企画と実装までの一貫担当へ、運用型広告の配信業務からマーケティング全体の設計へ、といった形です。3-2. 不満は事実の説明にとどめる
職場への不満に触れる場合は、評価や感情ではなく、できるだけ具体的な事実を伝えましょう。たとえば、担当した業務量や期間、業務内容などを説明すると、退職理由を客観的に伝えやすくなります。評価や人物への言及を入れると、話の焦点が退職の日程から職場の問題そのものへ移り、引き継ぎなどの相談へと進みづらくなります。一方、ハラスメントや契約違反など重大な問題がある場合は、退職の話し合いとは分けて、人事担当者や適切な相談窓口へ伝えることも検討してください。
会社から異動や待遇改善などを提案された場合でも、退職の意思が固まっているのであれば、その旨を明確に伝えましょう。このとき、前項で述べた転職先で実現したいことなど、社内の改善だけでは解決しにくい理由を重ねて伝えると、意図を説明しやすくなります。
3-3. 転職先の情報は必要な範囲だけ伝える
転職先の社名や条件は、必要な範囲だけ伝えます。広告・Web業界は取引関係が重なりやすく、転職先が現職の取引先や競合にあたる場合があります。同じ広告主を異なる代理店や制作会社が担当する場面も珍しくありません。社名を伝えると、担当案件の情報管理の観点から、在籍中の担当業務や引き継ぎの範囲を会社が見直す場合もあります。伝える範囲の目安は、退職日の調整に必要な入社日です。転職先の社名や業種などをどこまで伝える必要があるかは、就業規則や誓約書の内容、個別の事情によって異なります。競業避止や秘密保持に関する定めがある場合は事前に内容を確認し、判断に迷う場合は人事や専門家に相談しましょう。
4. 【状況別】退職を伝える例文
面談で起こりやすい状況は、転職先が決まっている、引き止められた、退職日を先延ばしされそうという3つです。状況ごとに、伝える順序と言い方は変わります。ここでは、判断のポイントと例文をあわせて解説します。
4-1. 転職先が決まっているときは入社日を先に伝える
転職先が決まっている場合は、入社日を先に伝えて、退職日の逆算に話を移します。動かせない入社日を最初に置くと、上司は引き止めるかどうかではなく、何をいつまでに引き継ぐかから検討を始められます。あわせて示すのは、引き継ぎに使える期間と、進行中の案件の状況です。案件名を社外に出せない場合は、制作進行や運用型広告の運用といった種別で伝えます。例文には、入社日、希望退職日、引き継ぎに使える期間、進行中案件の扱いをまとめています。
転職先から内定をいただき、11月1日入社で承諾いたしました。つきましては、10月20日を退職日とさせていただきたく、ご相談に参りました。担当しているキャンペーンは9月末に公開を迎えるため、公開後の4週間を引き継ぎの期間にあてたいと考えております。進行中の案件は、進行表と過去のやり取りをまとめて後任の方へお渡しします。
4-2. 引き止められたときは決意が固いことを繰り返す
引き止めを受けた際、退職の意思が固い場合は、提案への感謝を伝えたうえで、退職の意思と希望する日程を一貫して伝えましょう。昇給や異動といった改善案が出た場面で条件を検討すると、退職の相談が処遇の交渉に変わります。改善案に心が動くこともあるかもしれませんが、その場合も即答は避け、入社日と引き継ぎ期間の制約を共有してから、翌日までに返答する日程を決めてください。
ご提案いただき、ありがとうございます。評価いただき、大変ありがたく思っております。ただ、当社の体制では担当できない領域に挑戦したいと考えての決断のため、10月20日での退職をお願いしたい気持ちは変わっておりません。引き継ぎには残りの期間を充てます。後任の方の選定についてもご相談させてください。
4-3. 退職日を先延ばしされそうなときは引き継ぎ案を示す
退職日を先に延ばすよう求められた場合は、具体的な引き継ぎ案を示して、日程の根拠を伝えます。延期を求める背景には、後任が決まっていない、繁忙期に重なるといった業務側の事情がある場合があります。後任が決まる前でも進められる引き継ぎの内容、たとえば進行状況の書面化や取引先情報の整理を示すと、期日の合意を取りやすくなります。
延期をご検討される事情は理解しております。ただ、入社日が動かせないため、10月20日での退職をお願いしたく存じます。後任が決まる前でも着手できるのは、進行状況の書面化と取引先情報の整理、制作データの保管場所の一覧化の3点です。後任の方が決まり次第、読み合わせのお時間をいただければ幸いです。
5. 退職を伝えた後、退職日までにやること
退職の意思を伝えた後、上司と人事は後任の決定、社内外への公表、最終出勤日と有給消化の調整を同じ時期に進めます。本人が動くのは、退職届の提出、引き継ぎ計画の作成、連絡時期の決定、有給休暇の消化日程、担当した制作物の実績利用の確認です。ここからは、進める順に確認します。
5-1. 退職日を確定して退職届を提出する
上司や人事と退職日や必要な手続きを確認したら、就業規則に定められた方法で退職届を提出します。就業規則には書式や提出先、提出期限の定めがあるため、規定を確認してから作成します。会社所定の様式が用意されている場合は、記入欄を埋めて提出します。口頭の合意だけで進めると、最終出勤日や有給消化の起算日の認識がずれる場合があります。書面を出した日付を自分でも記録し、提出前にコピーを控えとして残しておくと安心です。
5-2. 引き継ぎ計画をつくって後任に渡す
担当案件ごとに引き継ぎ計画をつくり、後任へ渡します。後任が引き継ぐのは、作業の手順と判断の経緯の両方です。制作物はデータで渡せますが、なぜその案に決まったのかは、書き残さなければ伝わりません。広告・Web職の引き継ぎで書き出す項目は次の通りです。
| 案件の進行状況 | 現在の工程と次の締切 |
| 取引先情報 | 担当者名と直近のやり取りの経緯 |
| 判断の経緯 | デザインや原稿で合意に至った理由と却下された案 |
| 制作データ | 保管場所とファイルの命名規則 |
| 外部パートナー | 制作会社やカメラマンなどの連絡先と発注条件 |
後任が未定の場合も、上司に渡せる形で書面化を先に進めてください。
5-3. 社内外への連絡時期を上司と決める
同僚や他部署、取引先への連絡時期は、自分で決めずに上司と決めます。取引先への連絡は、後任の紹介とあわせて会社側が段取りを組む場合が多く、先に伝えると説明が二度手間になります。外部のスタッフと案件単位で組む機会が多い領域では、連絡の行き違いが発注中の業務を止めかねません。上司と決めておく内容は次の通りです。
| 社内への公表日 | チーム内と部署全体で時期を分けるか |
| 取引先への連絡方法 | 後任が同席する訪問かメールか |
| 外部パートナーへの連絡 | 発注中の案件で窓口を切り替える時期 |
業界内で顔を合わせる機会が続く相手もいます。連絡の順序を会社の段取りに合わせておくと、退職後の関係も保ちやすくなります。
5-4. 有給休暇の消化日程を退職日から逆算して決める
有給休暇の残日数を確認し、退職日から逆算して消化日程を決めます。最終出勤日と退職日は分けて考え、引き継ぎの完了日を最終出勤日に置きます。希望する有給休暇の取得日と引き継ぎの日程が重なる場合は、それぞれの日程を整理したうえで、人事や上司と確認しましょう。引き継ぎとの調整が必要な場合でも、有給休暇の取得を一律に断念する必要があるという意味ではありません。年次有給休暇は原則として労働者が取得時季を指定できます。あらかじめ残日数と希望する取得期間を書面で共有し、退職日や引き継ぎの日程とあわせて確認しておくとスムーズです。付与日数や取得できる時期は会社の付与状況によって変わるため、勤怠システムの記録や人事部門への確認を先に済ませましょう。
5-5. 担当した制作物を実績として使える範囲を確認する
在籍中に、担当した広告や制作物を転職後の実績として使える範囲を確認します。退職後の問い合わせでは確認に時間がかかり、選考に間に合わない場合があります。確認する対象は、公開済みか未公開か、クレジットの個人名、掲載媒体と掲載期間、制作データの持ち出しに関する規定の4つです。就業規則や誓約書には秘密保持の定めがあるため、条文を読んでから判断します。未公開の案件は、社名や商品名を出さず、担当工程と役割だけを記載する方法もあります。権利関係の可否は契約内容によって異なるため、迷う場合は上司や法務部門に確認してください。
まとめ
退職を伝える日は、法令や雇用契約、就業規則を確認したうえで、転職先の入社予定や自身の事情、担当案件の状況などを踏まえて検討しましょう。切り出す相手は直属の上司で、場所は事前に押さえた会議室や面談室です。面談では、退職の意思と希望退職日をあわせて伝えます。
退職の旨を伝えた後は、退職届の提出、引き継ぎ計画の作成、連絡時期の調整、有給休暇の消化日程、制作物の実績利用の確認などを進めましょう。
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