【名古屋特集】名古屋からアジアNo.1を目指すデジタルクリエイティブエージェンシー─株式会社アクアリング
(2017年02月02日掲載)
名古屋で老舗のWeb制作会社であるアクアリングは、スポーツとデジタルを組み合わせたイベントを実施するなど、Webサイトの制作にとどまらず、最先端の技術を駆使したコンテンツの制作までおこなっている、日本でも屈指の技術力を誇る会社です。そのアクアリングは、名古屋からアジアNo.1のデジタルクリエイティブエージェンシーを目指しているそうです。その真意を取締役の茂森さんに伺いました。(マスメディアン編集部)
株式会社アクアリング
取締役
茂森 仙直氏
──御社の事業概要を教えてください。
当社は、名古屋では老舗のWeb制作会社として認知されていると思います。2000年に設立して以来、Webサイトの制作一本でやってきたのですが、近年はスマホをはじめ、さまざまなデバイスが登場したことを背景に、3年前から、デジタルを使って世の中の課題を解決し、社会に貢献することを理念として、さまざまなデジタルコミュニケーションを提案しています。また昨年は、グループ会社アクアリング・グローバルストラテジーを設立しました。企業の海外向けデジタルコミュニケーションを一貫して支援する会社です。
──Webサイト制作以外にはどういったお仕事をされているのでしょうか?
ロボットやセンシング技術を利用したクリエイティブからデジタルサイネージまで、なんでもやっています。ただ、マネタイズについてはまだまだこれからです。それでも新しいことにチャレンジしているのは、ノウハウと世の中の流れをできるだけ自分たちのものにするためです。もちろん市場のニーズもありますが、面白いことをすれば、結果として問い合わせをいただくことができますからね。
最近ですと、スポーツクライミングであるボルダリングとプロジェクションマッピングを融合させた「WONDERWALL」を企画・開発しました。ボルダリングというスポーツにデジタルコンテンツを足すとエンタテイメントの要素が出てきます。海外では、すでに流行り始めているのですが、日本では当社が初の試みだったらしく、2020年東京オリンピックで公式種目に認定されたボルダリングの話題性も加わり、いろいろなメディアに取り上げていただきました。特に、日経トレンディの「2017年ヒット予測ベスト30」に選ばれた「AR(拡張現実)クライミング」の事例として「WONDERWALL」が紹介されたことで反応も上々です。
──最先端の技術を取り入れた面白い取り組みもされているんですね。新しく設立したアクアリング・グローバルストラテジーについても詳しく教えていただけますか?
アクアリング・グローバルストラテジーは、アジア諸国をターゲットにしたビジネスのコンサルティングからネットリサーチ、デジタルコミュニケーションまでを支援する会社です。政府は、東京オリンピックに向けて、観光客誘致を強化し現在年間2000万にのぼる観光客を4000万に増やすことを目標にしています。資源が少ない日本は、観光がますます重要産業になると同時に、今までと比にならないレベルで外国人が生活やビジネスに関わってくる状況ができることで、ある意味日本は今までの日本ではなく、「アジア」になると考えています。そこで当社では、今後インターネットを使った外国人とのコミュニケーションがますます活発になることを踏まえて、アジアにも進出していこうという方向に大きく舵を切りました。5年後にはアジアでNo.1のデジタルコミュニケーションパートナーになりたいと思っています。
──日本企業で、アジアへ展開している、もしくはこれから進出しようとしている企業をターゲットにしているということでしょうか。
そのとおりですが、ゆくゆくは、アジアやヨーロッパの企業など、アジア人とコミュニケーションを取りたいと思っているすべての企業まで広げていきたいです。アジアといっても、中国や韓国、ベトナムでは文化が全く違いますから。言葉や文化が違えば、コミュニケーションのあり方も変わってきます。私たちが目指すのはそれぞれの国の言語や文化、流行などを理解し、その国にあわせたデジタルコミュニケーションを支援することです。
──アジアを視野に入れつつ、名古屋を拠点にされているのはなぜでしょうか?
東京にいるよりも目立ちやすいからです。例えば、私は登山が好きなのですが、東京で山といえば高尾山ですよね。でも、高尾山って1000メートルもないんですよ。有名なのは、近隣に山がないからです。一方で、長野には3000メートル級の山がたくさんあります。でも一つひとつの名前なんか、みんな知らないんです。それと同じで、名古屋にいると目立つんです。おまけに、家賃は東京の半分とか3分の2程度なので、社員の福利厚生を充実させることができます。次のステップを東京ではなくアジアに決めているのもその理由からです。
大規模サイトを構築・運用する技術やノウハウを持っている会社は少なく、全国でも20~30社くらいで、中部圏でそこまでできるのは当社ぐらいなんです。そういった意味では、Web業界は建設業界に似ています。例えば、大型の施設を建設するとなった場合、コンペに参加するのは大手ゼネコンのいつも同じ顔ぶれ。それは、大規模なものをつくるノウハウが蓄積されているからです。Web制作の世界も同じで、大企業の案件のコンペに出ている会社はいつも一緒です。当社は、エリアに関係なく、大規模案件をいただいていますが、名古屋でもそれが実現できることのアドバンテージは大きいので、これからもワールドワイドで通用するような大規模案件の構築にはこだわりたいですし、もちろん地元の仕事にも今まで以上にどんどんやっていきたいと思っています。
──見事な戦略ですね!
名古屋はそういった意味でも、まだまだポテンシャルが高いエリアです。その魅力を引き出し、我々のビジネスとしても最大限のアドバンテージとして、むしろこのエリアを活用し、もっと盛り上げていく必要があると思っています。なんだかんだ言っても、名古屋のお客さまに支えられて今があるので。あとは、中部エリアで若い人が仕事をする場所をつくりたいという思いもあります。みんな東京に行っちゃうじゃないですか。やっぱり大都市には面白い仕事があると思います。でも、名古屋でも面白いことはできるんです。名古屋には魅力がいっぱいあるのに、それが伝わっていない。今年のお盆に、名古屋に帰省したクリエイターを集めて一緒に飲んだのですが、名古屋に帰りたいという人はいるんですよ。私たちとしては、ただ単に自分たちの仕事をするだけではなく、まちづくりや地域貢献にも力を入れていきたいと思っています。それが、回り回って当社の仕事にもつながると考えています。
──御社の強みはなんだと思いますか?
良いものをつくるために、とことんこだわっていることだと思います。今回、会社の5カ年計画を立てたのですが、改めてアクアリングの思いや考えを整理しました。そうしたところ「いいモノをつくる。とことん、いいモノをつくる。」という企業理念に行き着きました。私たちは、やはりものづくりにこだわっていきたい。それは、どういうことかというと、お客さんから依頼をいただいたとしても、つくって意味がないものはつくらないということです。例えば、「予算は数千万円あるから、とりあえずWebをつくりたい」と言われても、Webをつくることがその企業の課題解決にならないのであれば、お断りすべきだと考えています。
また、社員を客観的に見ると、一人ひとりが飛び抜けて優秀なわけではないと思いますが、その中で実績を残すことができているのは、人と人の間に入るのが上手いコミュニケーションの担い手が多いからだと思っています。ITって専門用語が多くて、小難しいところがあるじゃないですか。そこを噛み砕いて提案することで、お客さまに安心感を持ってもらえているのだと思います。またこれからの時代は、制作会社が一方的に提案をするのではなく、お客さまと「真のパートナーシップ」を築けることが最重要と考えます。お客さまの課題と僕らの技術をすりあわせて、失敗と成功を繰り返し、「ああでもないこうでもない」といって、お互いに学んで、共に答えをみつけていくというスタイルが必須条件になるはずです。
──社員の方は、御社のどういった点に働きがいを感じていらっしゃるとお考えですか?
当社を希望される多くの人の動機は、中部エリアにある制作会社の中では、一番刺激的な仕事ができるところだと聞いています。名古屋では老舗なので、この看板を自己実現に使えますしね。あとは、スキルアップやコミュニケーションを充実させるための支援制度でしょうか。3名以上集まれば部活として認められ、支援金が出ます。テレビゲームやお菓子づくり、映画、フットサルなどさまざまな部活が立ち上がっていて、僕も登山部に所属しています。勉強会や書籍購入など、個人のスキルアップについても活用されています。
──御社は時短勤務などいろいろな働き方ができる体制を整えようとしていると伺いました。
最近、経営陣は働きがいのある会社づくりに比重を置いています。それは、世の中の流れもでもありますが、働き方の選択肢を広げることで優秀な人材を確保したいからです。今も出産をして産休から復帰して、お子さんを保育園に預けて、1日5時間働いている人がいます。介護で休職している人もいますし、ある女性社員は、2年間育児のため時短で働いていましたが、現在は元の働き方に戻っています。社員のライフイベントはさまざまなので、ライフステージに合わせて、働き方が変えられるように、選択肢はできるだけ増やす体制を整えたいと考えています。
──多様な働き方をどのように実現しているのですか?
Webのスキルが水準以上にあることが前提となりますが、時短勤務が実現できているのはWeb業界ならではの理由からだと考えています。それは、Webサイト制作の仕事は、サイトを新規でつくることだけが仕事ではありません。サイトをつくった後に、PDCAを回しながら運用していくことも重要な仕事です。そのような仕事は、息の長いものが多く、スケジュールもある程度決まっているので、突発的な仕事は少ないため、時短で働いている人に向いています。また、テレワークも5年以内に全社員に導入したいですね。
──最後に、ひとことお願いします。
僕らは、言うなれば、甲子園を目指している地方の県立高校みたいなものです。横浜高校や中京大中京などの強豪校は、1番から9番まで強打者がそろっていますよね。でも、うちはそうじゃない。中には4番でピッチャーを務めるような人もいますが、ホームランなんか打てませんという人がほとんどです。でもみんな野球が好きで、愛知から全国に名を轟かせたいという人が多い。入ってくるのは、スーパースターばかりではなくて、Webやデジタルが好きで、うちに入って一旗あげたいという人です。今でこそ、高い評価をいただけるようになりましたが、それは、お客さんの投げた球を打ち返して、コツコツとヒットを積み重ねてきた結果なんです。なので技術力もそうですが、志をもってチャレンジしたい方と是非一緒に働きたいですね。
──本日は、ありがとうございました!
※2016年10月に取材した内容を掲載しています。
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