【北陸特集】社長はクリエイターを欲している?─株式会社クラスコ
(2016年07月20日掲載)
石川県の地元では知らない人はいないという不動産会社のクラスコ。その社長のブレーン的な存在である、デザイナー兼クリエイティブ・ディレクターの江森さんは、「地方の企業こそ、広告の役割を求めている。だから、やりがいのある仕事が沢山眠っている」と語る。それはどのようなことなのでしょうか。江森さんに話を伺いました。(マスメディアン編集部)
株式会社クラスコデザインスタジオ
クリエイティブ・ディレクター
江森洋平氏
──まずは、親会社のクラスコの会社概要を教えてください。
クラスコは、石川県で最大級の規模を誇る総合不動産会社です。もともとは「タカラ不動産」として1963年に創業し、2013年から「クラスコ」へ改称。今年で、創業53年を迎えます。
事業内容は、不動産賃貸や不動産売買などの不動産業を中心としながらも、多岐にわたります。最近では、リノベーションのフランチャイズ事業である「Renotta(リノッタ)」や、来店アンケートアプリ「とうろくん」の開発、物件を遠隔地からでも内見できる「オンライン内見」、クリエイターに無料で住宅を貸出し、受託制作案件を行うコミュニティづくりの「360&365creators」などの新しい試みにチャレンジしています。また、生活家具・雑貨や不動産機能、リノベーションや新築をご提案できるライフスタイルショップもオープンし、新しい時代のニーズに応えるために日々事業を拡大しているところです。
──そのなかで、クラスコデザインスタジオはどのような立ち位置なのでしょうか?
当社はクラスコのハウスエージェンシーという立ち位置です。もともとは、クラスコの一部署であったデザイン部が、分社化してできた会社です。クラスコデザインスタジオは、インテリアデザインチームと私が率いる広告デザインチームに分かれています。私のチームは、あまりいいイメージを持たれていない不動産業界を変えたいという思いのもと、クラスコ全事業のプロモーションやブランディングを担っています。
──多岐にわたる親会社の事業の、すべてのデザインを担っておられるのでしょうか?
人数の制約もあり、広告会社さんともお付き合いしていますが、基本的にはクラスコの全事業のブランディングに携わっています。「クラスコってこういう会社だよね」というイメージを、全てのサービスに対して持っていただくためです。事業が多岐に渡る分、一貫した企業イメージがなければ、フラフラしている会社だと思われかねません。多数ある事業に一本筋を通すことが、私たちの使命だと思っています。
──多数の事業に共通している、クラスコさんの思いを教えてください。
「暮らし」の分野で、新しい可能性を提案していくことです。住宅については、いろいろな固定観念があります。例えば、無駄に細かく部屋が分かれていたり、ドアがたくさんあったり。蛍光灯にしても、日本ではすごく明るいものをつけますよね。欧米では、昼のように明るくして、夜を過ごす人は少ないんです。それを否定するわけではないのですが、体を癒やすための照明もあるんだということを提案できたらなと思っています。新しいことをやり始めると、クラスコの営業スタッフも、お客さまである家主さんもだいたい初めは拒否反応を示されるのですが、やり続けるとそれがだんだん当たり前になっていくんですね。家主さまも、家について全て知っているわけではありません。暮らしのプロとして、新しい可能性を提案し、暮らしをより豊かにしていけたら良いなと思っています。
──そのような斬新なアイデアを考えるのはどなたなのでしょうか?
代表の小村です。クラスコは創業したときから、新しい試みをしている会社なんですが、その時代時代に合わせてのベストはなにかというとこを常に考えていて、それが脈々と伝わってきています。特に、今の社長はそうゆうものに敏感で、移り変わりが激しい時代だからこそ、今まで以上にスピード感をもってやっていこうという話をしています。
──社長の思いを代弁するのが御社の役割なのですね。
そうですね。代表が全体の方針を固めるので、それをどのように見せていくかを、言葉として落とし込んでいくのが当社の役割です。最後には広告にまで落とし込むのですが、その前段階の仕組みやプランのデザインからはじめます。代表が情報に敏感で、新しいことをやろうという姿勢を常に持っているので、私たちはそれを実現するためにはどうしたらいいのかを考え、先回りをして道を整える役回りを担っています。
──社長の知恵袋のような存在なんですね。ちなみに、江森さんはどのようなご経歴なのでしょうか。
僕は、生粋の金沢人です。ずっと金沢にくらしています。学校を卒業して、地元の制作会社でデザイナーとして6年間働いていました。
もともと、クラスコの代表とは前職時代から仕事の関係でお付き合いがありました。その仕事を通して、代表の考えにすごく共感して、尊敬できる会社だなと思っていました。デザインというもの蔑ろにしがちな業界のなかで、デザインを良くしていきたいという気持ちが伝わってきました。すごく好印象の会社でした。そんななか、僕が、前職を辞めてフリーになろうかなと考えてきたとき、どこから聞きつけたのか代表に食事を誘われました。そこで、社長のお話しを聞いて、お手伝いしたいなと思ったのが入社したきっかけです。社長の志に魅力を感じ、一緒に働きたいと思いました。
──今後、クラスコデザインスタジオをどのような会社にしていきたいとお考えでしょうか?
現在、グループ会社の仕事がほとんどなのですが、今後は、グループ外の仕事も増やしたいと思っています。一応独立した会社ですので、親会社への依存の少ない収益構造をつくっていきたいと思っています。半分くらいは外部からの仕事にしたいなと。クラスコの仕事だけだと、考えが凝り固まってしまいますしね。今は、その準備として社内を整理しているところです。
ただ、外部の仕事をするにしても、グループとしてお互いのためになるようなことをしていきたいです。例えば、現在、新しいお店を出しているのですが、そこにあまり名前の知られていない地元の作家さんの商品をセレクトして置かせいただき、プロモーションのお手伝いをさせてもらえたらなと思っています。作家さんとそれに触れるユーザーさんのためになる仕事をしてきたいです。視点を変えてみると、住まいの展示場は、ユーザーさんとモノが出会う場と捉えることもできるので、そのような新しい発想をどんどん取り入れたいと考えています。
──今、実際に動いている案件を教えていただけますか?
「360&365creators」というクリエイターのコミュニティづくりに取り組んでいます。築45年くらいになる、エレベーターのない5階建ての古い団地があり、誰も入らないのでどうにかしたいと思っていたんです。一方、金沢のクリエイターは東京と違って分業の意識が少なく、なんでも一人でやってしまう傾向があります。そこに危機感を感じていました。その2つの課題が合わさって、「クリエイターのトキワ荘」のアイデアが生まれました。エンジニア、カメラマン、デザイナーの方に無料で住んでもらい、そのかわりこちらも無料で仕事をしてもらうというカタチでコミュニケーションをしています。私たちも彼らから刺激を受けることができるので、仕事につながっていると思います。
──金沢で働くことについて、どう思われますか?
東京のほうが面白い仕事があるからと金沢から出ていく人も多いのですが、個人的にはそうは思いません。豊富な予算があったり、芸能人を使ったりする仕事がしたいのであれば東京のほうがいいと思いますが、広告の役割は、課題を発見して、その解決策を形にしていくことです。本質的な部分はどこでも一緒だと思います。むしろ、地方の企業のほうが、大変なことが多いので、広告の役割を求めている社長さんは多いのではないでしょうか。だから、やりがいのある仕事は沢山眠っているし、金沢でも、もっともっと面白いことができると思っています。
──本日は、ありがとうございました!
※2016年6月に取材した内容を掲載しています。
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