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環境問題を「自分ごと」に変えるコミュニケーション─公益財団法人世界自然保護基金ジャパン

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世界自然保護基金(WWF)は、スイスのWWFインターナショナルを中心に100カ国以上で活動する世界最大規模の環境保全団体です。その一翼を担うWWFジャパンで、広報・PR活動を担うキャンペーン担当者とメディアグループ長を募集。ブランドコミュニケーション室 ソーシャルモビライゼーショングループ長の増本香織さんに、詳しい仕事内容を伺いました。(マスメディアン編集部)

――まずは、ご経歴を教えてください。
より良い社会をつくるために自分の時間や力を使いたいという思いはずっと抱いていました。それで、学生時代から医療分野の緊急支援を行う人道支援活動に関心を持ちましたが、「病気や怪我で苦しむ目の前の人を助ける」ことだけでなく「病気にかかることを防ぐ」ことも必要だと感じるようになり、保健教育の分野で活動するNGOでインターンをしました。

大学卒業後は、ソーシャルビジネスの会社に入社してマーケティングを担当しました。そのうちに、温暖化が世の中でも話題になるようになってきて。社会基盤となる自然環境を健康な状態にすることが、人の命や暮らしを守るために重要だと思い、環境保全の分野で働きたいと思いました。

そして2013年にWWFジャパンに広報として転職。初めはオウンドメディアやSNSの運用をしていました。産休・育休を経て、サポーターリレーション(支援者の獲得と関係構築)を担当。部署の再編とともに、広報部門であるブランドコミュニケーション室に異動し、現在に至ります。

――どのような役割の部署なのでしょうか?
まず、WWFの二大目標として、「生物多様性の回復」と「脱炭素社会の実現」があります。2023年3月に公開された最新の科学の知見によると、世界の平均気温の上昇を産業革命以前から1.5度以内に抑えるためには、2035年までに60%の温室効果ガス排出量を削減しなくてはいけません(2019年比)。また生物多様性については、過去約50年間でおよそ70%も失われているというデータがあります。この急速な減少トレンドを回復トレンドに転換させていかなければなりません。

私たちブランドコミュニケーション室のミッションは、広報・コミュニケーション活動を通じてこの目標に貢献することです。各種メディアの情報流通構造を把握し、人間の行動科学に基づくフレームワークを活用するなど、情報伝達から一歩進んで、意識変容や行動変容を起こす働きかけを行っています。

また、ご寄付で成り立っている団体ですから、ご支援による成果を発信し、継続的なご支援や新規の支援者の獲得につなげることはとても重要です。WWFジャパンのブランド価値を向上させながら支援と活動の好循環をつくっていきたいと思っています。

――どのような方が所属しているのですか?
ブランドコミュニケーション室は、室長を含め10名の部署で、ソーシャルモビライゼーショングループとメディアグループの2グループに分かれています。

ソーシャルモビライゼーショングループは、個人を巻き込み、事業活動の成果に寄与する意識変容や行動変容を働きかけるキャンペーンを担う部署です。グループ長である私を含め、3名が所属しています。役割分担はせず、各メンバーがテーマの異なるキャンペーンをそれぞれ担当し、戦略構築から企画・制作、実行、分析までワンストップで行います。

メディアグループは、情報の収集から始まり、ニューストレンドの分析や各種調査をもとにメディアプランを構築し、施策の実行管理を行います。また、オウンドメディアの運用管理、資金調達部門との協働、ブランドの管理運営なども併せて実施しています。各機能を専門に担当する6名が所属しています。

――ソーシャルモビライゼーショングループでは、具体的に、どんな仕事をしているのでしょうか?
私が以前に担当したキャンペーンを例にお話しますね。2019年に実施した「Your Plastic Diet」というキャンペーンがあります。

プラスチックによる環境汚染は、認知も理解も進んでいます。しかし、問題を知っている人が増えても、直ちに解決に向かうかというと、そうではありません。

今でも大量生産・大量消費・大量廃棄の社会のあり方は変わっていないし、自然界へのプラスチックの流出量は増加しています。WWFは、温暖化におけるパリ協定のように、プラスチックの領域でも法的拘束力を持った国際条約が必要だと訴えてきました。

国際条約の実現に向けては、国連や各国政府への働きかけに加えて、メディアや生活者を巻き込んで、「実効性のある解決策が必要だ」という機運をつくる必要があると考え、世界で一斉に署名を呼びかけました。ひとりでも多くの署名を集めるためには、「自分に関わる問題だ」と考える人を増やさなければなりません。そこで、マイクロプラスチックに焦点をあて、「環境問題」から「あなたの健康の問題」に置き換えたのが「Your Plastic Diet」です。

このキャンペーンでは、大学に研究を委託し、人間が1週間に最大で摂取しているマイクロプラスチックの量を測定。その結果を、「あなたもプラスチックを食べています。1WEEKでクレジットカード1枚分を。」というコピーで発表しました。

「Your Plastic Diet」はカンヌライオンズ、D&AD賞、The One Showなどさまざまな広告賞を受賞している。

このキャンペーンは大きな話題となり、国際条約の策定を求める署名223万件を集めることに貢献しました。2022年3月には、国連環境総会にて全会一致で国際条約の策定が決定。現在、制定に向けて議論が行われています。

──コミュニケーションのアイデアが成果につながったのですね。
ポリ袋を食べて死んでしまったウミガメの写真を見たら、「かわいそうだ」と思うでしょう。しかし、それだけでは、誰もが行動を起こしたり、声を上げたりする、つまり意識や行動が変わるわけではありません。環境問題について、どう伝えたら「自分が解決しなければならない問題だ」と思ってもらえるか。効果的な伝え方は、世の中の潮流や関心事によって変わります。それを読みながら、メッセージをつくり、伝えるのが私たちの仕事です。

「Your Plastic Diet」は、WWF本部が主導したキャンペーンで、WWFジャパンの役割は日本社会に向けたローカライズでした。一方で、WWFジャパンが独自に実施するキャンペーンもあります。

例えば、「未来47景」というキャンペーン。気候危機がもたらす未来を都道府県ごとに予測したもので、自分の住んでいるところや出身地がどうなるのか見ることができます。温暖化は見慣れた風景や地域にゆかりのものにも影響があるんだ、と感じてもらい、自分ごと化してもらう目的で実施しました。

――意識変容、行動変容を重視されているということでしょうか。
「環境問題に関心はあるが、具体的な行動はしていない」って、よくあることだと思うんですね。だから「行動につなげる」ことにフォーカスするのが大事なんです。

効果的なキャンペーンを設計するために、WWFでは、行動科学の知見や手法を取り入れ「SAVE NATURE PLEASE(セーブ・ネイチャー・プリーズ)」というキャンペーン設計・コミュニケーション設計のガイドを開発し、活用しています。

「SAVE NATURE PLEASE」の枠組み(WWF Webサイトより引用)

――ここからは、現在の求人についてお伺いします。募集職種と、求めるスキルについて教えてください。
今、募集しているのは、メディアグループのグループ長1名と、ソーシャルモビライゼーショングループのキャンペーン担当者1名(有期契約職員)です。

メディアグループ長は、大切にすべきステークホルダーに活動を伝えるためのメディアプランニングと実行が仕事です。チームを主導し、他部門との協働を推進していただくプレイングマネージャーです。

求める経験としては、PR会社のプランナーや事業会社の広報担当としてメディアプランニングをしている方や、コンサルティング会社でプロジェクトマネジメントの経験がある方はマッチします。また、組織内外の情報のハブになるので、対人関係構築力がある方が適していると思います。

キャンペーン担当の業務内容は先ほど説明した通りで、私たちと2024年4月まで一緒に働いてくださる方を募集しています。プロジェクト管理能力とプランニング力が必要なポジションです。広告会社のストラテジックプランナーやクリエイティブディレクター、事業会社でのマーケティング経験がある方は、非常に親和性があると思います。現在もそのような経験を持つ人たちが働いています。

――NPO・NGOや環境問題に関わる仕事をしてきた方が多いのでしょうか?
もちろんいますが、そうではない職員も多いです。広告会社で働いていた方もいますよ。環境問題への強い関心は必要ですが、関連分野での業務経験は必須ではありません。ただ、新しいことを学ぶ意欲や、環境問題という答えのない課題に自分なりの仮説を持って挑めるガッツのある方が向いていると思います。

――最後に、応募を検討している方へのメッセージをお願いいたします。
WWFジャパンに入職して10年になりますが、今が一番、「脱炭素」や「生物多様性」に注目が集まっていると感じます。これまでは対話も難しかったような業界の方との協働も増えてきました。社会へのインパクトある施策が実現しやすい社会状況だと思います。

環境問題はすごく複雑で、すぐには結果の出ない長期戦です。でも、そういう答えのない分野だからこそ、自分なりの工夫やアプローチができて裁量も大きくなります。そして、それがはまると、着実に社会に変化を起こしていけるのが、この仕事の魅力です。より良い未来をつくりたいと思う方がいましたら、飛び込んできてほしいと思います。

──これまでのスキルや経験を社会や世界に役立てたい方にはやりがいのある仕事ですね。本日はお話いただき、ありがとうございました。

※2023年3月に取材した内容を掲載しています。