【北陸特集】第一線で活躍するWebマーケター・クリエイターが転職先に老舗酒蔵を選んだのはなぜか?―福光屋

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
北陸特集 企業特集 U・Iターン

1625年創業、金沢の老舗酒蔵、福光屋。伝統ある同社に2017年3月、マスメディアンからの紹介で異業種から2名のクリエイター・Webマーケターが入社されました。彼・彼女らはなぜ入社を決めたのか、現在はどのような業務を行っているのか、またそれが会社にどのような効果をもたらしているか、お話しをお聞きしました。(マスメディアン編集部)

――まずお二人のご経歴を教えてください。
米田:私は新卒で、石川県内にあるデジタル配信系の会社で10年強務めておりました。Webサイトの運用から始めて、ディレクションなどを経て、最終的にWebマーケティング部で管理職をしておりました。Web広告全般、アフィリエイト、純広告、あとはCRMを活用してメールマガジンの配信や、その管理も担当していました。

国沢:私は金沢美術工芸大学卒業後、東京で製紙会社のデザイナーとして5年間勤務していました。食料品・トイレタリー関連のクライアントを中心にパッケージのデザインを請け負う部署で、クライアントから直接話を聞いて、グラフィックのデザインや箱の設計などを行っていました。

――お二人とも1社目の会社で長く勤めた後、福光屋に転職されていますが、転職を考えられたきっかけや理由はありますか?
米田:前職は成長率が高く、入社当初から比べて退職時には売り上げが10倍以上伸び、社員数も1000名を超えていました。その中で徐々に、自分はどれだけパフォーマンスを発揮できたかという部分が見えづらくなってきていました。そこで、コンパクトな会社で自分がどういう働きができるのか見直したく、10年目を過ぎたタイミングでこれを良い機会だと思い、転職活動をはじめました。

国沢:私は、結婚を機に金沢へIターンでの転職をすることにしました。出身は金沢ではないのですが、大学時代に慣れ親しんだ土地であったため、その点で戻ってきやすかったです。

――ではどういう基準で福光屋を選ばれたのでしょうか。
米田:コンパクトな会社がいいなと漠然と思っていましたが、安定した地盤がありながら、新しいことにチャレンジしている会社を第一条件にしていました。その要素がないと、成長できるということをその中に入ったときに自分が感じられるかわからなかったので。福光屋は、お酒という地盤もありながら、食品や化粧品の製造販売といったチャレンジをしていて、その点を魅力に感じ、入社を決めました。

国沢:金沢へ拠点を移した後も地元色にとらわれず、幅広く仕事がしたいという思いがあり、各地に営業所を持っているような会社がいいと思っていました。このため、東京に複数の店舗を持ち、ECサイトも含めて販路は全国に渡る福光屋を選びました。

――お二人とも、前職に近しい業種を選ぶという選択肢はなかったのですか。
国沢:前職はクライアントからの受託制作が多かったため、その都度商品等の情報を収集する必要がありましたが、インハウスのデザイン部ですと、自社ブランドのデザインになりますので、日常的に商品知識を得ることができるという面で魅力を感じ現職を選びました。

米田:前職はWeb上の販売のみでしたが、そもそもデジタル分野やWebマーケティングにこだわりは持っていませんでした。会社として明日から違うものを売ることになれば、そのための戦略を立て製品をつくっていかなくてはいけません。それよりも、直接消費者の声を聞くことができ、それを業務に反映できるメーカーであることにこだわっていましたね。

株式会社福光屋
開発本部 健康美事業部 通販課係長
米田和矢氏

――米田さんの部署はどういった人員構成ですか。
米田:上司が1名と、私の他に化粧品・日本酒それぞれサイトの更新などの担当が1名ずつおり、販促の企画や在庫管理、外部のオペレーターとの連絡を担当しています。私はその2名のマネジメントをしながら、数字を見ることがメインです。また、他社モールへの出品や営業も一部行っております。

――仕事内容をもう少し詳しく教えていただけますか。
米田:自社ECサイトの分析や改善を日々行っています。ただ、改善をサクサクできるかと思っていたんですが、システムとの連携などの事情もありそこまで順調には進まないというのが現状です。このため、他社モールでの出品を増やすなど、自社ECサイト以外でのお客さまにどう商品を届けるかの施策も実施し、Web部門全体の売り上げをあげていくように数字も管理しています。

――国沢さんは企画広報室の配属と伺いましたが、どういった人員構成なのでしょうか?
国沢:部署は5名です。デザイナーは私を含めて3名。そのほかに紙媒体やWebの記事をつくる編集担当が1名、蔵の見学なども兼務をしている広報担当が1名です。ほかに、その5名をマネジメントしている上司がおります。

――デザイナー以外の方もいる部署なんですね。その中でどのような業務をされていますか?
国沢:直営店で使用するPOPや、定期的に開催している直営店でのイベントの案内フライヤー、さらに製品を卸す小売店向けの販促ツールなども作成しています。ほかの2名のデザイナーと連携をとって、その時々で分担している形式です。

――他の部署や違う職種の方との協力体制もとっているんですか?
米田:他部署へ直接足を運んで、どうですか?という話を聞いています。生産や製造の部署に1日1回は、話をしに行っていますし、前職のようにメールだけというコミュニケーションではないですね。いつ製品ができるか、というところから常に確認しながらECサイトも戦略を立てています。さらに、最近では営業本部と連携を取り、分析しながら、商品の開発を行うという動きも出てきました。客層が異なっているので、たとえば安価で自宅で飲めるようなセット商品を出すなど、購買のデータに合わせた取り組みは他部署と連携で行っています。

――ではデザイナーは他部署とのやり取りはいかがでしょうか。
国沢:店舗の方とのやり取りは頻繁に行っています。直営店が6店舗あり、それぞれが独自の色を出して売り場づくりやイベント企画を行っているので、各依頼をデザイナーで分担しながら、手がけています。イベントの企画は店舗ごとで考えていて、グラフィックをつくる作業になるとわたしたちのところに相談がきます。店舗ごとにお客さまの層が異なるので、それぞれの店舗に合わせたデザインができるよう心がけています。

――そういった業務は、前職のクライアントワークの仕事に通じるものがあるのでしょうか。
国沢:各要望をヒアリングしながら決めていくという部分は近しいものがありますね。ただ、福光屋というブランドイメージは守りつつ、それぞれの店舗ごとに異なる特徴を訴求していくといった部分で難しく感じるところもあります。1年間デザイナーとして勤め、ようやく少し見えてきたかなと思っています。さらに年々、化粧品関連などイベントやインバウンドの需要も増えてきていますし、まだまだ吸収しないといけないことがたくさんありますね。

――インバウンドといえば、Webサイトは英語対応がされていますよね。ほかにそういった対応もされているんですか?
米田:英語やフランス語ができるスタッフがいるので、電話対応なども行っています。また、私の方で越境ECを取り組んでいきたいと思っています。現地の法律や、輸入輸出の対応など、どういったトラブルがどこで起きる可能性があるか調査しながら、慎重になるべく早く対応していきたいです。

株式会社福光屋
企画広報室
国沢聖恵氏


――では質問を変えて、働く雰囲気はいかがですか?
国沢:女性が多い職場で、仕事中は静かに集中することが多いですが、オフの時は皆で旅行に行ったりコンサートに行って盛り上がったりと、オンオフのメリハリがしっかりしている職場かと思います。

米田:全社としてそんな雰囲気ですね。ピリッとするときはしっかり仕事していますし、終わった後は雑談しながら一緒に帰るということも結構多い気がしますね。部署を超えてご飯に行くというようなこともあります。

――オフィスはいろんな部署の人がいらっしゃいますもんね。
国沢:企画広報室と杜氏(日本酒づくりの統率者)でご飯を食べるといったこともあります。そうすると、まったく知らなかった日本酒をつくる蔵のことが聞けて、お酒についての知識や酒造りの苦労なども知ることができ、商品への愛着も増しますね。

――そうなんですね。前職から働き方は変わりましたか?
米田:人数が少ないので、ひとりあたりの業務範疇が広くなったと思います。その分それぞれが責任感を持っているので、ピリッとしている時はほんとに集中して仕事をします。仕事に厳しい方が多いと思いますね。

――国沢さんの前職も人数が多いですよね。
国沢:そうですね。ただ、前職はクライアントごとに担当がわかれていたので、営業とクライアントとで、デザインを詰めていくというスタイルが多かったです。現在は、部署一体となってデザインをつくり上げていくということが多いです。

――転職をして何が一番良かったと感じますか?
国沢:約400年続く酒蔵が隣に併設されている状況で働いているので、近くで日本の文化、お酒づくりの文化を感じられることですね。文化を学びながら仕事ができるるのはとても面白いです。日本文化をプライベートでも学んでいこうと、近々お茶を習いはじめようと思っています。

――いいですね! では、今後手がけていきたい業務などもありますか?
国沢:現在手がけている販促ツールの制作以外に商品企画などにも携わっていければと思っています。また、お酒づくりや醗酵の文化をお客さまにより良く伝わるような企画を、自分でも考え発信していければ良いですね。

米田:前の会社は退職前に管理職だったので、現場で動けるということが新鮮かつ久々であり、面白く感じています。部下のマネジメントもしないといけないという状況ですが、自分で結構動いていいのは楽しいですし。これからやりたいこととしては、ECのお客さまの分析から出る企画をもう少し深掘りしていきたいと思いますね。ネットで展開しているとお客さまの顔って見えないですが、実際お客さまはいらっしゃるわけで。このため商品をどこに出すのか、タイミングをどうするのか、を突き詰めていけばもっともっと伸びるんじゃないかなと思います。

――お二人ともまだまだ活躍の場があるということですね。本日は、ありがとうございました!

※2018年5月に取材した内容を掲載しています。