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【北陸特集】金沢から東京へチャレンジ!注目のクリエイター─株式会社Hikidashi

金沢

東京

クリエイティブ

北陸では知らない人はいないぐらい知名度の高いフリーペーパー『Favo』の制作部門が独立・分社化してできたのが株式会社Hikidashiです。そのHikidashiに所属している山田さんは、今年4月に金沢から東京へ単身で東京オフィスを立ち上げました。山田さんは、金沢でノリに乗っているアートディレクターの一人です。今回は、北陸特集ですが、東京の表参道にあるファッショナブルなシェアオフィスで、山田さんに上京の動機と今後の展望についてインタビューしました。(マスメディアン編集部)

株式会社Hikidashi
取締役
アートディレクター
山田 隼人氏

──Hikidashiという会社について聞かせてほしいです。
そもそもの話をすると、『Favo』というフリーペーパーを発行しているストアインクという会社が金沢にありまして、その制作チームが、お客さんのつながりでちょこちょこと依頼を受けて、『Favo』以外のデザインもしていました。それで、『Favo』以外の仕事をするデザイン部隊をつくろうかという話があったんです。

ちょうどその時に、自分は、10年務めた金沢の事務所を辞めて独立しようとしていました。娘が4カ月だったこともあり、奥さんに「社会をなめるな」と言われまして(笑)。どうしようと思っていたら、夜、居酒屋で隣に当時ストアインク制作部のマネージャーがいたんです。それがご縁で、どうしても就職しないといけない私は入社しました(笑)。

入社したときは、「Hikidashi」という、チームの名前も決まっていませんでした。実は「Hikidashi」という名前は自分がつけたんですよ。みんなで案を出し合って、新人の自分も出して、最終的に、自分の案が通りました。

──Hikidashiという社名を考えたのは、山田さんだったのですね。
はい。社名はとても大切だと思っていて、例えば、個人的にはシンプルなデザインが好きなんですけど、「株式会社シンプル」という社名にしてしまうと、ごちゃごちゃした仕事はしないのかと思われるのではないかといろいろ考えちゃったんですね。そのなかで、「デザインは本質を引き出すもの」ということは絶対にぶれないと思いました。そのために、「これいらない」「これ足りない」という作業なのかなと、引いて足して「引き出し:Hikidashi」なんですけど、今でもとても気に入っています。やはり社名はとても大切ですね。

──そうだったのですね。入社してからどのような仕事をされてきたのでしょうか。
採用面接で3秒も経たないうちに、社長に『Favo』の仕事はやらないよと宣言しました(笑)。社長も「いいよ」といってくれて(笑)。『Favo』以外の仕事をしていました。石川県の代理店や印刷会社さんの仕事で、マニュアル通りにデザインする仕事でした。その指示書が全然よくなくて、その通りにつくってもよくないものになるなと思いながら淡々と仕事をこなしていました。でも、2週間も経つと、このままでは、生きていけないと、仕事も自分で取ってきたろうと思いました。

──すごいですね。仕事も自ら取ってこようと思ったのですね。
はい、奇跡的ですけれども。もちろん与えられたものをやりつつ、プラスで営業していました。あの時動いていなかったら、未だにオペレーターだったと思います。

初めは、友人や知人にお願いして仕事をもらっていました。チラシとかチケットとか細かいものが多かったですが、つくっていたら、評判がよくて、どんどん案件が大きくなって、金沢市や石川県の大きな仕事もやらせてもらえるようになりました。

──そして、東京へ進出してきたということでしょうか。
はい。今年の4月2日に東京オフィスを立ち上げました。まだ、2カ月ちょっとしか経っていません。東京オフィスは自分がやりたいといって始まったプロジェクトです。去年ぐらいに、ふと社長に「やりたいことある?」と聞かれて、「東京に行きたいですね」と答えたら、次の日に、「じゃあ、行って来い」と言われて……。「本当ですか?」みたいな感じから始まりました。事務所もいろいろ自分で調べて、現在のシェアオフィスに決めました。ここは別格だと思います。所属している人も第一線のクリエイターで、自分のようなADもいれば、CM、音楽、映像とかいろんなジャンルのクリエイターと、同じ空間で過ごしています。徐々に科学反応が起きていろんなプロジェクトが動き出しています。一人でいるより断然いいです。

──東京に行きたいと思ったきっかけを教えてください。
昨年、渋谷ヒカリエで開催された「NIPPONの47人 2015 GRAPHIC DESIGN」という、各県で1人、グラフィックデザイナーの作品を展示するイベントで、面識はなかったのですがナガオカケンメイさんに石川県代表として選んでいただきました。自分は、47人で一番若かったので、少し調子に乗ってしまったのですが(笑)。結果的に東京に来るきっかけになりました。みんな地方のデザイナーなんですけど、素晴らしい作品ばかりで……。話を聞いていると、若いころ東京でバリバリ仕事をして、地元に戻ってきた組の方が多くて。「なるほど」と思って、自分も東京の空気を吸わないといけないなと思いました。

自分は、ずっと金沢だったので、初上京です。ときどき、東京に来ていたんですけど、東京で広告を見ていると、キャッチコピーにしてもグラフィックにしても切れ味が違うんですよね。自分もつくり手なのに、客観的に「すごいな」とただただ感心して、「いやいや悔しがらないと!」と思いました。そうなるためには、やはり一度、東京に住んでみないと思いました。そのことを奥さんに伝えたところ承諾してくれたのですが、いざ出発のとき「いってらっしゃい」と言われたんですよ(笑)。ということで、今は単身赴任です。初めての一人暮らしで、料理もしたことがなかったので、大変なのですがなんとか生活しています。環境が全く違いますね。野菜は貰うものだと思っていましたから(笑)。

──東京から金沢に進出というのはあると思うんですが、金沢から東京というのはチャレンジですよね?
そのとおりなんです! 新幹線開通前くらいから、東京のデザイン事務所が金沢に事務所を開設しました。「く、黒船が攻めてきた!」と思ったし、情けない話ですが実際に仕事を取っていくんですよね。ですが、金沢から東京へ進出するという事例は少ないので、「やったろう!逆輸入や!」と思って、チャレンジしかないですけど、頑張っています。

──その……、「東京の事務所に転職して上京」とは考えなかったのですか?
自分も真っ先に考えてみたんですけど、自分は今の社長に恩を感じているところがあって、早い段階で、その案は消えました。自分は、環境のせいにしたくないというか、与えられたこの環境でもっとできることが沢山あるんじゃないかなと思うんです。

自分は、今31歳なんですけど、東京に出てくるタイミングが41歳だと難しいと思うんですよね。それに、家族や会社、友人などいろんな人が、自分に期待していて、今はやるしかないという状態です。

──東京の仕事と金沢の仕事で、どういった点に違いを感じますか?
仕事を進めるスピードが違うと思いました。こちらに来て、何度か打ち合わせをさせていただいたのですが、企画からローンチまでがとにかく速い。「ちょっと考えてきます」というのは通用しなくて、その場で「どう思う?」と聞かれて、「じゃあこれでいこう」というふうに、どんどん進んでいきます。今まで使ったことのない脳みそを使っている気がします。

──逆に、金沢の良さはなんでしょうか?
金沢と東京で一番違うのは分業なのかどうかというところでしょうか。金沢は、きっちり分業をしているわけではないので、いろいろなスキルが身につくと思います。もちろん、デザイナー、デイレクター、ライターといったくくりはあるのですが、ADの私も、キャッチコピーも書きます。「こんなこともできるの?」と最近よく言われます。

案件の規模としてみたときは、金沢のほうが劣るかもしれませんが、仕事の中味というか携わり方は、広告に留まらず、ブランディングまで幅広いです。これは、当社だけかもしれませんが、パッケージだったり、本だったり、これ専門ではなく、いろんな仕事をシェアする感じなので、それが楽しいですね。規模は小さいですけど、自分でつくったものでこんなふうになるんだというのが分かります。大規模の仕事だと、なにをやったのか分からないとかよくあると思います。オーナーさんと話をしながらつくれるので、そのへんも面白いんですよね。

──金沢にも多くの制作会社があると思いますが、御社の特徴はどこにあるのでしょうか?
会社名にあるように、本質を引き出すということを大事にしています。金沢にも制作会社がたくさんあり、例えば、綺麗だったり、可愛かったり、奇抜だったりと、それぞれ会社の個性が制作物にも現れます。自分は事務所の色というより、案件の色を出したいので、いろんな表情があってもいいんじゃないかなと思います

──まさに、「引き出しの多さ」ですね(笑)。
そうなんです。その言葉を引き出すために話しました(笑)。

──最後に、今後の展望を教えてください。
上京して2カ月経ちました。まだまだ試行錯誤の段階ですが、せっかく東京に来たのだから、多くの方に認知していただけるような仕事をしたいと思っています。金沢に帰ると、知り合いに「金沢を捨てた」と言われるのですが(笑)、そういうつもりはこれっぽっちもありません。有名になって、東京で成功事例をつくって、金沢に還元したいと思っています。

今、金沢はすごく盛り上がっていて、オシャレなお店が増えているんです。でも、そのデザインをしているのは、東京の人だったりして、とても切ない気持ちになりました。だから、今、東京で頑張って、5年か10年経ったら、金沢のそのような仕事を自分が一手に引き受けたいです(笑)。

──本日は、ありがとうございました!

※2016年6月に取材した内容を掲載しています。

1行目左:WELLSPRINGブランディング/中:FavoGroupブランディング/右:自治労石川大会アートディレクション
2行目左:Renotta加盟店募集コンセプトブック/中:BONTA W コンセプトブック/右:白山百善アートディレクション
3行目左:和菓子村上パッケージ/中:Anbanaオフィシャルサイト/右:イエタッタ公式キャラクター「イエティ」

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