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文具は「必需品」から「嗜好品」へ。デザイン文具メーカーの戦略とは─株式会社デザインフィル

東京

事業会社

クリエイティブ

デザイン文具のリーディングカンパニーとして、デザインに軸足を置いたライフスタイルの提案をしているデザインフィル。その根底には「デザインによる社会と文化への貢献」という理念があります。1950年の創業以来、一貫してデザイン性の高い文具を提供してきた同社ですが、いま転換期を迎えようとしています。今回は文具業界の現状と同社の今後目指す方向についてクリエイティブセンタープロダクトグループ統括マネージャーの吉田真由美さんにお話を伺いました。(マスメディアン編集部)

──近年、デジタル化の影響で、文房具を使用する機会は減っている気がします。そのような中、文具業界はいまどうなっているのでしょうか。
国内の文具市場は現在、緩やかな縮小傾向にあります。かつての日本は文具消費大国でしたが、IT技術の進歩によってペーパーレス化が進み、文房具の使用頻度は以前に比べ減少しているからです。しかし、デザインや質など情緒的な付加価値が高い商品は、国内外問わず需要が高まっており、そこには将来性があると考えています。そのため、今後は海外市場へ積極的にアプローチしていくつもりです。

──「嗜好品」としての文房具市場を狙っているのですね。すでに海外展開に向けた動きはあるのですか。
先日、「メゾン・エ・オブジェ」という、フランスのインテリア雑貨の見本市に出店しました。そこに同行し、市場調査を行ったのですが、熱量にすごく驚きました。クラフト志向が強く、良質なものを好むフランスでは当社の商品はとても好評なようです。あとは台湾などでも質の高い日本の文具は大変人気があります。

クリエイティブセンタープロダクトグループ
統括マネージャー 吉田真由美さん

──世界的にクラフト志向が高まっているのですね。ちなみに国内ではどうでしょう。
国内も同様です。デザイン性の高い文具は人気があります。現在の日本では低価格でも品質の高い文房具が多く存在します。そういったなかで独創性やユニークさがより魅力的に映っているようです。万年筆や活版印刷が好まれるのも同じです。アナログ回帰の傾向が見られます。それも意外と若い人たちの間で人気だったりするんですよ。

──なおさら「嗜好品」として好まれるのですね。今後はそのようなラインナップの商材を展開していくのですか。
はい。これらの分野はデザインフィルが得意とするところです。今後はより一層力を入れていきたいと思っています。

──そういった背景もあっての募集なのですね。ではここで、貴社のデザイナーについて教えてください。
当社が展開する「ミドリ」ブランドのデザインをお任せします。紙製品や文具、雑貨などの新規開発とリニューアルが主な仕事になります。新規開発とリニューアルの割合はおおよそ4:6くらいのイメージです。

──実際に商品として発売されるまでの流れはどうなっているのですか。
社長と事業部長クラスの間で話し合って年間計画をつくり、それに基づいて動いていきます。

年間計画で示されたスケジュールを基に営業と協力しながら市場調査をし、企画を練って、営業や広報など他部署のメンバーや経営陣に向けたプレゼンを行います。デザイナーもデザインの意図や商品の思いをプレゼンします。そこで認められたものが発売されるといった流れです。デザイナーの仕事は商品が発売されて終わりでなく、パッケージやPOP、リーフレットなど販促物の制作からSNSを用いたプロモーション全体を通して実際の売り上げにまで関与してもらいます。

──企画から始まり、販促まで、すべての過程に携わるのですね。その場合評価はどうなっているのでしょう。
評価軸の中心は商品売り上げです。前述のとおり、自身がつくり上げた商品がお客さまの手に渡るまで携わることができるので、大変ですが、その分やりがいも大きいと思います。デザイナーの仕事だけが売り上げに影響を与えるわけではないので、売り上げ以外にも行動面や新たな取り組みなども積極的に評価しています。とりわけ新しいジャンルをつくり上げたというのは評価の上で大きなポイントになります。

──今回募集のインハウスデザイナーは契約社員からのスタートとのことですが、評価されれば正社員になるということもあるのですか。
はい。それも考えています。

──その場合のキャリアパスを教えてください。
アートディレクションを行うゼネラリストのようなプロデューサーになるか、自分にしか描けない世界観を表現するプロフェッショナルなデザイナーになるかのどちらかになると思います。

商品をつくる際、プロデューサーとデザイナー、製造の3名で担当します。プロデューサーはプロダクトの全責任者。正社員になった場合、このプロデューサーの役割を担ってもらうことになります。全体の数字もわからないといけないですし、商品化するにあたって製造面も理解していなければなりません。加えて営業との折衝も必要です。契約社員のデザイナーであってもいろいろプレゼンする機会はあるのですが、それよりもう少し対応領域が広くなります。もしくは、その人にしか生み出せない世界観を表現するプロフェッショナルなデザイナー。ある意味で“職人”の域に入っているような人は、自身の担当シリーズのデザインに集中してもらうという道もあります。

──2つの道があるのですね。それもふまえた上でどのような要素がデザイナーに求められるのでしょうか。
営業やプロデューサー、製造などさまざまな部署の人と協力して動いていくので自分の企画した商品のために周囲を巻き込む熱意であったり、コミュニケーションスキルであったりが必要です。デザイナーの強い思いから、バイヤーさんや店舗の方を巻き込んで、ポップアップショップを出店したこともあります。こういった取り組みができるのはとても楽しいのではないでしょうか。

──自分が企画した商品を信じて、そのために行動できる熱意が必要なのですね。本日はお話ありがとうございました。

※2019年10月に取材した内容を掲載しています。