トップページは“死んだ”のか? SNSのみを重視する米国の新興メディア

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デジタル

動画ニュースを発信するアメリカの新興メディア「NowThis」。同メディアのトップページには、“HOMEPAGE. EVEN THE WORD SOUNDS OLD. WE BRING THE NEWS TO YOUR SOCIAL FEED.(ホームページという言葉は古い。我々は、ソーシャルフィードにニュースを流します)”とだけ書かれている。その戦略の真意はどこにあるのか。ニューヨーク現地で、同社のプレジデントであるAthan Stephanopoulos(アサン・ステファノポーロス)氏に聞いた。


「NowThis」のトップページ。現代におけるコンテンツはあくまでソーシャルメディアのフィード上でこそ読まれるものであり、ホームページは意味を持たないとしている。


—「NowThis」はトップページにコンテンツを置かず、分散型メディアを象徴するような設計を採用していますが、これにはどのような戦略がありますか。

これからのデジタルメディアの進化とも共通するのですが、我々はメディアビジネスの前提として考えていることが3つあります。

1つめは、いまや多くの人がSNSというプラットフォームから情報を得るようになったこと。実際に、アメリカの若者の情報源はほとんどの場合、SNSになっています。2つめは、これも若者に顕著ですが、モバイルのデバイスが主流になっていること。そして3つめは、動画コンテンツの普及です。

その3つの潮流を捉えるメディアになろうというのが、「NowThis」の戦略です。それらをカバーする意味では、我々自身のホームページは意味を持たないのです。我々が制作するコンテンツは、すべてプラットフォーム上で展開されるのですが、そこで考えるべきは、いかにプラットフォームに適した形で直接情報を提供するかということです。

Facebookを見ている時、あるいはTwitterを見ている時、Instagramを見ている時のユーザーの心理や体験は、当然ながら異なりますよね。だからこそ、そのプラットフォームの読者に合わせたコンテンツづくりが重要なんです。


「NowThis」のプレジデントを務める、Athan Stephanopoulos(アサン・ステファノパウロス)氏。


ではそれはどういうことかと言えば、たとえば、FacebookやTwitter、Instagramなどのソーシャルフィード上の動画は、いまや字幕でたり、テキストスクリーンがでるのは一般的になっています。実はこうした手法は、もともと私たちが開発したものでした。

つまり、プラットフォームに最適なコンテンツをつくり、またプラットフォームのなかで完結するコンテンツをつくることも重要だと考えています。これまで主流だったのは、プラットフォームに記事をポストして、自分たちのサイトにユーザーを連れてくるというものでした。

しかし、Facebookなどのプラットフォーム内でそのまま動画を視聴できたほうが、ユーザーとしての体験は心地が良い。だからこそ、我々は読者を外に連れて行くのをやめ、自分たちのサイトはシャットダウンしました。


—今回のニューヨークのメディア企業の取材では、「メディアはどう稼いでいるのか」をテーマの一つにしています。外部のSNSを重視する「NowThis」の場合は、どのような手法でマネタイズをしているんですか。

マネタイズのルートはいくつかありますが、最も大きな収益源となっているのは、ブランデッドコンテンツです。SNSに最適なコンテンツをつくり、そのコンテンツを確実に配信できることをパッケージにしています。

ここ数年、各メディアが「クリエイティブスタジオ」を設け、メディアとしてのスキルを活用してブランドのためにコンテンツをつくることが増えています。

ただその制作力と同等か、あるいはそれ以上に、コンテンツをディストリビューション(流通)させることも重要です。その点、我々は各プラットフォーム上で若い読者を多く有しているため、若者にリーチしたい企業にとっては魅力的でしょう。

実際に、ブランドコンテンツの制作、そして流通をサポートすることは、「NowThis」の収益源として急速に伸びています。その背景には、アメリカではこれまでのテキストを主体とした記事以上に、動画コンテンツが普及していることも挙げられます。

また、FacebookやTwitter、Instagram、Snapchatなど、最近はプラットフォームが動画コンテンツでのマネタイズメニューを開発しています。それもマネタイズの一つになっていますし、あとはライセンスですね。



「NowThis」について取り上げた『編集会議』2017年春号の記事に喜ぶアサン氏。将来的には日本市場への参入も検討しているという。


これからの話になりますが、長い尺のオリジナルコンテンツをつくり、シリーズ化していきたいと思っています。そして、NetflixやHulu、Amazonといったコンテンツを探しているパートナーを組んでビジネスをしていくことを考えています。

さらに、こうしたプラットフォームを基盤とする戦略を採っている以上、世界的な展開を視野に入れています。1年ほど前から、中国のSNSプラットフォームにもコンテンツの配信をスタートさせています。

Facebookユーザーの75%はアメリカ国外にいる人々であり、また英語圏でないユーザーも年々増加している。それは無視できない、大きな市場であることも意味しています。


—最後に、昨年から今年にかけてアメリカは激動の時代にあると言えますが、そのなかでのメディアの役割をどのように考えていますか。

情報発信が“民主化”したことは、良い側面をもたらした一方で、悪い側面ももたらしています。だれでも発信できることがしまったことで、不正確な情報を意図的にしろそうでないにしろ、受発信できるようになってしまった。

だからこそ、我々メディアの責任はこれまで以上に重くなっていると感じます。ただそれは、ひたすらファクトに基づいた情報だけを発信することだけを意味するわけではありません。

もちろんそれによってフェイクニュースを戦っていくことは重要な役割の一つではありますが、読者に考えるきっかけを与える記事を届けることこそが重要なのです。それは、情報の受け手にどういったことを考えてほしいのか、どんなアクションをしてほしいのかが伝わる記事をつくることです。

そのためにも、メディアが配信する記事には、そのメディアならではの“視点”が問われるようになるのではないかと考えています。(5月11日、アメリカ・ニューヨーク現地で取材)


(編集会議 編集部/宣伝会議 AdverTimes)